2020/05/05 18:07 更新
順序統計量の同時分布に関してしっかり考えてみた
目次

前提知識

測度論(Radon-Nicodym微分程度まで)
順序統計量

本題

動機など

今, $X_i \sim f \quad i.i.d. \quad(i=1,...,n)$とする. 「順序統計量$(X_{(1)}, ..., X_{(n)})$の結合分布の確率密度関数は何?」と聞かれたとき, なぜか自信満々に$n!\Pi_{i=1}^n f(x_i)$と答える方々がいますが, その方々は大体の場合厳密に証明しているわけでなく, そんな感じがするからと直感的に考えている場合が多い気がします.(私も順序統計量の結合分布がこういう確率密度関数にしたがっていると, 昔は直感的に信じていたし, 何をもって厳密なのかとかがわかりませんでした.)
よって, この記事ではの結合変数$(X_{(1)}, ..., X_{(n)})$の分布の確率密度関数を現在の私なりに厳密に示して見ようと思います. (いろいろ調べたのですが, この証明はどこを探しても見つからなかったため, あくまでも現時点の自分なりの証明で間違っていたらすみません.)
本記事では連続の場合を示します.

証明

$U_i\sim U(0,1) \quad i.i.d. \quad (i = 1, ...,n)$に対して, その順序統計量の結合変数$U_o = (U_{(1)},...,U_{(n)})$の確率密度関数$f_{U_o}$が

$$f_{U_o}(u_{(1)},...,u_{(n)}) = \begin{cases} n! \quad &(u_{(1)}\le...\le u_{(n)}) \\ 0 \quad &(otherwise) \end{cases}$$

であることを示せば良い. (連続な確率変数の場合$F_X(X)$は$U(0,1)$に従うから.)

今, $I= [0,1]^n$とし, $\tau: I \to I$を$(x_1, ..., x_n)$を昇順に並べかえるだけの写像とする. 念の為に注意しておくと, これは可測関数である. また, もちろんここでは$I$にはルベーグ測度$\mu$が備わっているものとしている.

次に,

$$\begin{aligned} \bar{U}= \{(x_1,...,x_n)\in I\mid x_1 \le x_2 \le ... \le x_n\}, \\ U=\{(x_1,...,x_n)\in I\mid x_1 < x_2 < ... < x_n\}, \\ L=\bar{U}^c, D = (U\cup L)^c \end{aligned}$$

と定義しておく. ここでも念の為に言っておくと, $D$は$n-1$次元以下の空間に含まれてしまうので$\mu(D)=0$である. また, $\mathrm{Im}\tau = \bar{U}$である.

ここでそれぞれの確率変数の裏には(つまり定義域は)標本空間$(\Omega, P)$があることを明示しておく. $P$は測度で, また, 特に必要ないので$\sigma$加法族は省略した.

問題をはっきりさせるために, 我々が今何を求めているのかを考えると, それは$\frac{\mathrm{d}P^{U_o}}{\mathrm{d\mu}}$というRadon-Nicodym微分である. これが先程の$f_{U_o}$に$a.s.$で一致することを見れば良い. ただし, ここでは$P^{U_o}$は$U_o$の分布, すなわち, $P^{U_o}(A) = P(U_o^{-1}(A)) = P(U_o \in A) \quad (\forall A:\R^nの\mathrm{Borel}集合)$である.

最後に, $U=(U_1, ..., U_n)$としておく. すると, $U_o = \tau(U)$であり, また, 定義から, $P^U = \mu$である.(ここでの$=$はBorel集合族上のみでの意味での$=$である.) 

記号の準備ができたので, あとは一直線に計算するだけである. 今, 任意の$\R^n$のBorel集合$A$をとってきたとき,

$$\begin{aligned} P^{U_o}(A) &= P^{\tau\circ U} (A) \\ &= P^{U}(\tau^{-1}(A)) \\ &= P^{U}(\tau^{-1}(A \cap U) + P^{U}(\tau^{-1}(A \cap D) +P^{U}(\tau^{-1}(A \cap L) \\ &= P^{U}(\tau^{-1}(A \cap U) + \mu(\tau^{-1}(A \cap D)) + P^{U}(\phi) \\ &= P^{U}(\tau^{-1}(A \cap U)) \\ &= \sum_{\sigma \in S_n} P((U_{\sigma(1)}, ...,U_{\sigma(n)}) \in A \cap U) \quad (S_nは対称群) \\ &= n! P((U_1,...,U_n)\in A \cap U) \\ &= n! \mu(A \cap U) \\ &= n! \mu(A \cap \bar{U}) \quad (\because \mu(D) = 0)  \end{aligned}$$

となる. ただし, $4$行目から$5$行目では, $0 \le \mu(\tau^{-1}(A \cap D)) \le n! \mu(D) = 0$であることを用いた.
従って, 以上からRadon-Nicodym微分$\frac{\mathrm{d}P^{U_o}}{\mathrm{d\mu}}=f_{U_o} \quad a.s.$となることがわかった. □

コメント
2020/05/05 18:39

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後から思ったけど確率変数と集合の記号$U$が被ってて混乱を招きますね