2021/03/01 15:48 更新
有限な線型空間がp群であるという話(改訂版)
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目次

前提知識

線型代数と環論の初歩(素イデアルとか$\Z$の性質とかくらい)

濃度が有限の線型空間ってなんだろうと思ったら実は$p$群でしたという話です。短いです。

有限な線型空間

 まず次の補題を示します。
lem 有限体は、ある素数$p$がただ一つ存在して$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$を部分体にもつ。

$(\because)$ $K$を有限体とする。ただ一つ存在する環準同型$\phi\colon\mathbb{Z}\to K$に対して、$K$は整域だから$\mathrm{Ker}\phi$は素イデアルで、$K$が有限であることから$\phi$は単射ではないので、素数$p$がただ一つ存在して$\mathrm{Ker}\phi=(p)$となる。
よって$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\simeq\mathrm{Im}\phi\subset K$

 以下$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は$\mathbb{F}_p$と表記し、上の$p$は$\mathrm{Ch}K$と表記します。


prop 有限な線型空間$V$は濃度が$p^n(n\geq0)$である。つまり、線型空間となりうる有限群は$p$群のみである。

$(\because)$ 自明な線型空間の場合は明らかである。
$V$の係数体を$K$とする。$V$は有限であるから、線型空間としての次元も有限で、これを$i$とする。$V\simeq K^i(i\geq1)$だから、$|K|<\infty$である。よって$p:=\mathrm{Ch}K$とすると、$K\supset\mathbb{F}_p(j\geq1)$だから、$V$は$\mathbb{F}_p$上の有限次元線型空間でもある。よってその次元を$n$とすると、$|V|=|(\mathbb{F}_p)^n|=p^n$


次の系は直接示すことも容易ですが、ちょうどいい命題が示されたので系として提示しておきます。

cor 有限体$K$の濃度は$p^n (n\geq1)$である$(p=\mathrm{Ch}K)$

$(\because)$ $K$は有限な線型空間なので。

上の議論では$p$群であることまでしか言っていませんが、有限な線型空間$V$は特に$(\mathbb{F}_p)^n$と、線型空間として同型なので、線型空間構造を取れる有限群は$(C_p)^n$($C_p$の$n$個の直積)に限られることも同様にわかります。