2020/10/06 22:34 更新
マクスウェル方程式の微分形と積分形
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目次

マクスウェル方程式とは

Maxwell方程式は、電磁気学の基礎となる方程式で、用途によって微分形と積分形のどちらも見られます。これらは、ベクトル解析の知識を使えば、お互いを簡単に導き合える事がわかります。
微分形は、局所的な値を用いる偏微分方程式です。

$$\left\{\begin{array}{ll} \nabla \cdot \boldsymbol{E} & =\dfrac{\rho}{\varepsilon _0} \\ \nabla \times \boldsymbol{E}&=- \dfrac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t} \\ \nabla \cdot \boldsymbol{B} & =0 \\ \nabla \times \boldsymbol{B} & =\mu _0\boldsymbol{j}+\mu _0\varepsilon _0\dfrac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} \end{array}\right.$$

積分形は、大域的な値を用いる積分方程式です。1番目と3番目の式は任意の閉曲面$S$について成立して、2番目と4番目の式は任意の曲面$S$とその境界の曲線$C$について成立します。

$$\left\{ \begin{array}{ll} \begin{aligned} \int_{S} \boldsymbol{E} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} &=\dfrac{Q}{\varepsilon _0} \\ \int_{C} \boldsymbol{E} \cdot\mathrm{d}\boldsymbol{s} &=-\int_{S} \frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} \\ \int_{S} \boldsymbol{B} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} &=0 \\ \int_{C} \boldsymbol{B} \cdot\mathrm{d}\boldsymbol{s} &=\mu _0\int_{S} \boldsymbol{j} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}+\mu _0\varepsilon _0\int_{S} \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} \end{aligned}\end{array}\right.\\$$

微分形→積分形 の導出

それでは、まず微分形のMaxwell方程式から積分形のMaxwell方程式を導きます。数学的な厳密性は置いときます。神様ごめんなさいm(_ _)m
本題に入る前に、発散定理を復習しときます。

発散定理

任意のベクトル場$\boldsymbol{A}$に対して、以下の式が成立する。

$$\int_{V} \nabla \cdot \boldsymbol{A}\mathrm{d}V=\int_{S} \boldsymbol{A} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}$$

直感的にも、そりゃそうだろっていう感じですね。流量を体積分したら、内部は打ち消し合うので、外表面の流量と等しくなりますというものです。
これを使うと、

$$\int_{S} \boldsymbol{E} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} =\int_{V} \nabla \cdot \boldsymbol{E}\mathrm{d}V=\int_{V} \dfrac{\rho}{\varepsilon _0}\mathrm{d}V=\dfrac{Q}{\varepsilon _0}$$

が導かれました。同様にして、

$$\int_{S} \boldsymbol{B} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} =\int_{V} \nabla \cdot \boldsymbol{B}\mathrm{d}V=\int_{V} 0\mathrm{d}V=0$$

が導かれます。
次に、残りの2つを示すために、ストークスの定理を復習します。

ストークスの定理

任意のベクトル場$\boldsymbol{A}$に対して、以下の式が成立する。

$$\int_{C} \boldsymbol{A} \cdot\mathrm{d}\boldsymbol{s} = \int_{S} (\nabla \times \boldsymbol{A}) \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}$$

これを使うと、

$$\int_{C} \boldsymbol{E} \cdot\mathrm{d}\boldsymbol{s} =\int_{S} (\nabla \times \boldsymbol{E}) \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}=-\int_{S} \frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}$$

が導かれました。同様にして、

$$\int_{C} \boldsymbol{B} \cdot\mathrm{d}\boldsymbol{s} = \int_{S} (\nabla \times \boldsymbol{B}) \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}=\mu _0\int_{S} \boldsymbol{j} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}+\mu _0\varepsilon _0\int_{S} \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}$$

が導かれます。以上で、微分形のMaxwell方程式から、積分形のMaxwell方程式を導くことができました。

積分形→微分形 の導出

次に、積分形のMaxwell方程式から微分形のMaxwell方程式を導きます。
まず、発散定理と電荷密度の定義より、

$$\begin{aligned} \int_{S} \boldsymbol{E} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} &=\int_{V} \nabla \cdot \boldsymbol{E}\mathrm{d}V \\ \dfrac{Q}{\varepsilon _0}&=\int_{V} \dfrac{\rho}{\varepsilon _0}\mathrm{d}V \end{aligned}$$

です。
ここで、次の重要な定理を使用します。($\varepsilon$-$\delta$論法で証明できます。)

2つのスカラー場$\phi,\psi$が、任意の閉領域Vに対して式 1が成立するとき、任意の点において$\phi=\psi$である。

$$\tag{1}{\int_{V}\phi dV=\int_{V}\psi dV}$$

これを使うと、

$$\int_{S} \boldsymbol{E} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} =\dfrac{Q}{\varepsilon _0}$$

より、

$$\nabla \cdot \boldsymbol{E} =\dfrac{\rho}{\varepsilon _0}$$

が導かれます。同じように、

$$\nabla \cdot \boldsymbol{B} =0$$

も導かれます。
残りの2つの式も、ほとんど同じ方針で証明できます。ただし、次はベクトル場の面積分なので、次の定理を使用します。($\varepsilon$-$\delta$論法で証明できます。)

2つのベクトル場$A,B$が、任意の曲面に対して式 2が成立するとき、任意の点において$A=B$である。

$$\tag{2}{\int_{S} \boldsymbol{A} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S} =\int_{S} \boldsymbol{B} \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{S}}$$

積分形のMaxwell方程式にストークスの定理を用いて、面積分の被積分関数を比較したら、残りの2つの式も、導出できます。疲れたので、続きは今度書きます。

おわりに

Maxwell方程式は、光、磁性、電波、電気回路等々、様々な場所で現れる現象がたった4つの方程式で表現されているため、美しいと言われがちですが、よく見ると、$E$と$B$が非対称で気持ち悪いとも言えます。この辺を、深く考察していった結果が、対称性や共変性という概念に繋がり、相対性理論につながったという曰く付きの方程式なのでございます。(^o^)