2020/08/16 21:37 更新
Eulerの関係式の導出
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はじめに

最近、田崎熱力学を読んでいたら、Eulerの関係式を導出する際に、少し工夫された計算を行っていた。この計算法は、昔高専の数学の例題にあって、こんなんありかよぉ〜、と思った事を思い出した。それをEulerの関係式を題材に、平易に解説しようと思う。

Eulerの関係式

Eulerの関係式とは、ヘルムホルツの自由エネルギー$F$に対して成り立つ式で、

$$\gdef\var{T;V,N} \gdef\varl{T;\lambda V,\lambda N} F[\var]=-Vp(\var)+N\mu(\var)$$

というものである。ここで、$F$は完全熱力学関数であるため、田崎記法に則って$[\var]$としているが、数学的には、$F,p,\mu$はいずれも、$\Reals^3→\Reals$の関数である考えれば良い。

Eulerの関係式の導出

ヘルムホルツの自由エネルギーの示量性より、$\forall \lambda \in \Reals ^+$に対して、$\lambda F[\var]=F[T;\lambda V,\lambda N]$が成立する。$F[\var]$を微分可能と仮定し、両辺を$\lambda$に対して、微分すると、

$$\gdef\pdv#1#2{\frac{\partial #2}{\partial #1}} F[\var]=V\pdv{(\lambda V)}{F[\varl]}+N\pdv{(\lambda N)}{F[\varl]}$$

である。そして、この式に、$\lambda=1$を代入する。私は、高専時代これが理解できなかった。$\pdv{(\lambda V)}{F[\varl]}$に代入!?それってどういう意味なんだ!?そんな事していいのか!?
よく考えると、$\pdv{(\lambda V)}{F[\varl]}$とは、$\left.\pdv{V}{F[\var]}\right|_{V=\lambda V,\, N=\lambda N}$の略記にすぎない。というのも、あくまで、点$[\varl]$における偏微分を、$\pdv{(\lambda V)}{F[\varl]}$と書いているにすぎない。したがって、この式に、$\lambda=1$を代入すると、$\left.\pdv{V}{F[\var]}\right|_{V=V,\, N=N}$であり、省略して書けば、$\pdv{V}{F[\var]}$である。(これで伝わるだろうか?)

したがって、マクスウェルの関係式を用いると、

$$F[\var]=V\pdv{V}{F[\var]}+N\pdv{N}{F[\var]}\\ =-Vp(\var)+N\mu(\var)$$

が導かれる。