2020/06/13 09:39 更新
マクスウェルの関係式の導出
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目次
まえがき
復習がてらに、マクスウェルの関係式を導出してみた。全微分使っての導出がよくあるが、普通に偏微分で出来ると思ったので、偏微分で証明した。
本題
熱力学では2つの自由変数で状態が定まる。熱力学関数はすべて$C^2$級関数であることを仮定する。
内部エネルギー
まずは、内部エネルギー$U(S,V)$を考える。熱力学第一法則より、
$$\gdef\dd{\,\mathrm{d}} \dd U=T\dd S-p\dd V$$である。したがって、
$$\gdef\pdv#1#2{\dfrac{\partial #2}{\partial #1}} \begin{cases} T= \left( \pdv{S}{U} \right)_V \\ p= -\left( \pdv{V}{U} \right)_S \\ \end{cases}$$が分かる。偏微分係数は偏微分の順序に依存しないため、
$$\left( \pdv{V}{T} \right)_S= -\left( \pdv{S}{p} \right)_V $$が分かる。
エンタルピー
次に、内部エネルギーをルジャンドル変換して、変数を$(S,p)$に変える。つまり、
$$H=U-\left( \pdv{V}{U} \right)_SV=U(S,V)+pV$$を考える。これは、エンタルピーと呼ばれる。一見これは、$(S,V,p)$の関数に見える。
しかし、
より、エンタルピーは$(S,p)$に依存する関数である事がわかる。定義式の両辺を偏微分すると、
$$\begin{cases} T= \left( \pdv{S}{H} \right)_p \\ V= \left( \pdv{p}{H} \right)_S \\ \end{cases}$$が分かる。偏微分係数は偏微分の順序に依存しないため、
$$\left( \pdv{p}{T} \right)_S= \left( \pdv{S}{V} \right)_p $$が分かる。
ヘルムホルツの自由エネルギー
次に、内部エネルギーをルジャンドル変換して、変数を$(T,V)$に変える。つまり、
$$F=U(S,V)-TS$$を考える。定義式の両辺を偏微分すると、
$$\gdef\pdv#1#2{\dfrac{\partial #2}{\partial #1}} \begin{cases} S= -\left( \pdv{T}{F} \right)_V \\ p= -\left( \pdv{V}{F} \right)_T \\ \end{cases}$$が分かる。偏微分係数は偏微分の順序に依存しないため、
$$\left( \pdv{V}{S} \right)_T= \left( \pdv{T}{p} \right)_V$$が分かる。
ギブスの自由エネルギー
次に、内部エネルギーをルジャンドル変換して、変数を$(T,p)$に変える。つまり、
$$G=U(S,V)-TS+pV$$を考える。定義式の両辺を偏微分すると、
$$\gdef\pdv#1#2{\dfrac{\partial #2}{\partial #1}} \begin{cases} S= -\left( \pdv{T}{G} \right)_p \\ V= \left( \pdv{p}{G} \right)_T \\ \end{cases}$$が分かる。偏微分係数は偏微分の順序に依存しないため、
$$\left( \pdv{p}{S} \right)_T= -\left( \pdv{T}{V} \right)_p$$が分かる。
あとがき
ルジャンドル変換を、変数を変えると表現してるけど、なんと言ったらいいかわからない。厳密には、「3変数関数だけど、1つの変数の偏微分は恒等的に0である。」のように言うべきかもしれない。