2022/11/03 19:50 更新
数学ゴール伝 第 [4] 話 反省会の数と式の問題
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目次

あらすじ

県下一の進学校エンパイア高校への進学を果たせず,公立高校に通うことになった高校一年生の大野田春道.彼は入学早々,若者たちにとっての世界最高峰の数学コンテストである「数学世界選手権」の日本代表になるという自身の野望を公言するのだった.

その宣言に食いついたのは彼と同じクラスの生瀬アミであった.アミは粗削りながらも独特のバリ鋭い数学センスと確かな数学的思考力の片りんを見せる.実際にはあまり関わりたくないタイプの風変わりな人物ではあるが,見かけは美少女だそうで,向こうからぐいぐい積極的に絡んでくるし,数学好きにとっては趣味も合うわけだから,隣の芝生として眺める分にはうらやましい限りである.

ある日,ハルミチは非常勤の美術教師である境九三が元数学世界選手権日本代表で銀メダリストであったことを知り,弟子入りを志願する.

今回取り上げるのは,境が主催する中高生向けの数選対策講座で出題された問題の一つである.

※ 原作に登場する問題の数字を変えただけの問題です.この手の問題を思いつく人はホントにすごいと思います.手を伸ばせば届く程度の難易度だし,それほど複雑な形をしていない解がちゃんと出てくるわけですから.ただし,こういった問題はかなり人工的であり,絶対に何がしかの「仕掛け」があります.ですから,その仕掛けが何か,出題者の狙いを読み解くことがポイントとなります.

問題

次の等式を満たす正の実数 $x$ を求めよ.

$$x+\sqrt{x(x+2)}+\sqrt{x(x+4)}+\sqrt{(x+2)(x+4)}=4.$$

元ネタ情報

2015 年日本ジュニア数学オリンピック (JJMO) 予選,問題 7.

解答

答えが知りたい方はこちらをご覧下さい.もっとうまい解法があるかもしれません.

$a=\sqrt{x}$,$b=\sqrt{x+2}$,$c=\sqrt{x+4}$ とおく.
$c^2-a^2=4$ であることに注意すると,与えられた方程式は

$$a^2+ab+ac+bc=c^2-a^2$$

と書き換わる.左辺は $(a+b)(a+c)$,右辺は $(c-a)(a+c)$ と因数分解できる.任意の正の実数 $x$ に対して $a+c=\sqrt{x}+\sqrt{x+4}>0$ であるから,上の等式の両辺を $a+c\ne 0$ で割っても同値性は損なわれない.その結果,

$$a+b=c-a$$

を得る.これを

$$2\sqrt{x}=\sqrt{x+4}-\sqrt{x+2}$$

と書き換えた後,両辺を 2 乗すると

$$4x=2x+6-2\sqrt{(x+2)(x+4)}$$

となる.これは

$$\sqrt{x^2+6x+8}=3-x$$

と変形できるので,さらにこの両辺を 2 乗すると,

$$x^2+6x+8=9-6x+x^2$$

となり,$12x=1$,すなわち $x=1/12$ を得る.$\Box$

参考文献

藏丸竜彦,数学ゴールデン 1,白泉社 (2020).