2020/04/23 22:48 更新
共変ベクトルと反変ベクトル
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目次

前提知識

ベクトル空間を学び、双対空間を朧げに理解した人。

本題

物理学において、物性を議論する上で物性テンソルの反変性と共変性を理解する事が重要である。しかし、なぜかきちんと説明している日本語文献が少ないので、簡単に紹介したいと思う。反変性と共変性は、ベクトルの成分の、基底変換による変換性によって定義できる。

反変ベクトル

$V: \Reals ^n$における基底を$e_1,...,e_n$とする。$v \in V$を成分表示すると、$v =\sum _{k=1}^nv^ke_k$のように表される。
※以後は、アインシュタインの縮約記法を用いる。

次に、$e_{k} =A^{k'}_k e_{k'}$を満たすを満たす異なる基底$e_{1'},...,e_{n'}$をでの成分表示を考えると、以下の2つの式が得られる。

$$\begin{cases} v=v^{k'}e_{k'} \\ v =v^ke_k=A^{k'}_k v^ke_{k'} \\ \end{cases}$$

$e_{k'}$は基底であるので、それぞれのベクトルの成分は等しい。
したがって、2つの式を見比べると、$v^{k'}=A^{k'}_k v^k$であることが分かる。$e_{k} =A^{k'}_k e_{k'}$の基底変換のもとで、このように成分が変化するベクトルは反変ベクトルと呼ばれる。
位置ベクトルや速度ベクトルは、反変ベクトルとして定義できる。

共変ベクトル

次に、双対空間$V^*$における基底を$e^1,...,e^n$とする。$e^i \cdot e_j=\delta^i_j$である。$f \in V^*$を成分表示すると、$f =f_ke^k$のように表される。
そして先ほどと同じように、$e_{k} =A^{k'}_k e_{k'}$と基底変換すると、成分がどのように変化するかを考える。そこで、$A^{k}_{k'}$を$A^{k'}_{k}$の逆行列とする。つまり、

$$A^{i}_{k'}A^{k'}_{j}=\delta^i_j$$

が成立するとする。すると、$e_{k'} =A^{k}_{k'} e_{k}$である。これを用いると、

$$f_{k'}=f\cdot e_{k'}=f_ke^k\cdot e_{k'}=A^{k}_{k'}f_k$$

$e_{k} =A^{k'}_k e_{k'}$の基底変換のもとで、このように成分が変化するベクトルは共変ベクトルと呼ばれる。
電場や力は、反変ベクトルとして定義できる。

スカラー

反変ベクトル$v$と共変ベクトル$f$の内積$f_kv^k$を考える。同じ座標変換を行うと、

$$f_{k'}v^{k'}=f_kA^{k}_{k'}v^{k'}=f_kv^k$$

である、つまり、座標変換によらず、値は変わらない。これをスカラーと呼ぶ。
位置エネルギーは、スカラーとして定義できる。

物性テンソルへの応用

例として、焦電性を考える。反転対称をもつ系は焦電性をもたない。これを示す。
焦電性は焦電係数で表される。これは、共変ベクトルである。したがって、