前提知識
累乗和の公式には、階乗冪の総和式^1を利用できる。しかし、総和を取るときに本質的なのは、差分を構成することである。差分の総和は隣接する項同士が綺麗に打ち消し合う^2ため、特にtelescoping sumと呼び、本項ではこの訳語に「望遠鏡和」を当てる。
^1: $\displaystyle\sum^n_{k=1} k^{\over m} = \dfrac{1}{m+1}n^{\over m+1}, \sum^{n-1}_{k=1} k^{m \over} = \dfrac{1}{m+1}n^{m+1 \over}$
^2: $\ds\sumn a_k = \sumn (b_k - b_{k-1}) = b_n-b_0$
階乗冪からの累乗和の公式の導出
$k^{\over m} = k(k+1)(k+2)\cdots(k+m-1)$という上昇階乗冪の総和を取ると、再び上昇階乗冪となる性質がある。この性質は、下降階乗冪でも同様に成り立つ。
下降階乗冪の場合は、総和は$n-1$までであることに注意。
これら階乗冪の性質を利用すると、累乗和$\ds \sumn k^2 , \sumn k^3$の公式を導出できる。上昇階乗冪を利用した計算は次の通りである。
しかしこの方法では、より高次の累乗和$\ds\sumn k^4, \sumn k^5, \cdots$を求めるには、計算する項が減らないので手間がかかることになる。
望遠鏡和による導出
ここで一般に、数列$a_n$の総和を$S_n$とする。$a_n$がある数列$b_n$の階差数列になっていると、求める総和$S_n$は簡単に計算できる。階差数列の各項が計算過程で互いに打ち消しあう和となることを望遠鏡和と呼ぶ。そうすれば、$m$乗和を計算するのに、階乗冪では$m$項計算しなければならないが、望遠鏡和で構成できれば常に2項を計算するだけでよい。
$$ S_n = \ds\sumn a_k = \sumn (b_k - b_{k-1})=b_n-b_0$$例えば、$b_k = k(k+1)$とすると、
$$ \begin{cases} b_0 = 0 \\ a_k = b_k - b_{k-1} = k(k+1)-(k-1)k = 2k \\ \end{cases} \\ \Rightarrow S_n = \sumn a_k = \sumn 2k = n(n+1) - 0 \\ \therefore \sumn k = \frac{1}{2}n(n+1)$$同様に、$b_k = k(k+1)(2k+1)$ とすると、
$$ \begin{cases} b_0 = 0 \\ \begin{aligned} a_k = b_k - b_{k-1} &= k(k+1)(2k+1)-(k-1)k(2k-1) \\ &=k(2k\{(k+1)-(k-1)\} +\{(k+1)+(k-1)\})\\ &=k(2k\cdot 2 +2k)\\ &=6k^2 \end{aligned} \end{cases} \\ \Rightarrow S_n = \sumn a_k = \sumn 6k^2 = n(n+1)(2k+1) - 0 \\ \therefore \sumn k^2 = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$$同様に、$b_k = k^2(k+1)^2$ とすると、
$$ \begin{cases} b_0 = 0 \\ \begin{aligned} a_k = b_k - b_{k-1} &= k^2(k+1)^2-(k-1)^2k^2 \\ &=k^2((k+1) - (k-1))((k+1)+(k-1)) \\ &=k^2\cdot 2 \cdot 2k \\ &= 4k^3 \end{aligned} \end{cases} \\ \Rightarrow S_n = \sumn a_k = \sumn 4k^3 = n^2(n+1)^2 - 0 \\ \therefore \sumn k^3 = \{\frac{1}{2}n(n+1)\}^2$$同様に、$b_k = k^2(k+1)^2(2k+1)$ とすると、
$$ \begin{cases} b_0 = 0 \\ \begin{aligned} a_k = b_k - b_{k-1} &= k^2(k+1)^2(2k+1)-(k-1)^2k^2(2k-1) \\ &=k^2(2k\{(k+1)^2 -(k-1)^2\}+\{(k+1)^2+(k-1)^2\})\\ &=k^2(2k\cdot4k+2k^2+2)\\ &=10k^4+2k^2 \end{aligned} \end{cases} \\ \Rightarrow S_n = \sumn a_k = \sumn (10k^4+2k^2) = n^2(n+1)^2(2n+1) - 0 \\ \begin{aligned} \therefore \sumn k^4 &= \frac{1}{10}\{n^2(n+1)^2(2n+1) -\frac{2}{6}n(n+1)(2n+1) \} \\ & = \frac{1}{30} n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n -1) \end{aligned}$$これらを一般化すると、奇数$2m-1$乗和の時は$k^m(k+1)^m$、偶数$2m$乗和の時は$k^m(k+1)^m(2k+1)$を元に恒等式を計算すると良い。