2020/11/26 10:13 更新
Mikusinskiの演算子法(その2)演算の導入
目次
前提知識
演算子法(その1)の続きです.
クラス$C$関数
定義 連続関数$f\colon[0,\infty)\rightarrow{\mathbb C}$ の集合$C([0, \infty),\mathbb{C})$を単に$C$と表記し,その元をクラス$C$の関数と呼ぶ.また,$C$の元としての$f$は,$f$または$\left<f(t)\right>$と表記することとする.(なお,混乱のない場合は$\left<,\right>$を省略する)
命題 $C$に次の演算を導入する:
(和)
$$f+g:=\left<f(t)+g(t)\right>$$(積)
$$fg:=\left<\int_0^tf(\tau)g(t-\tau)\mathrm{d}\tau\right>$$このとき,以下の性質が成り立つ:
-
$\forall{f,g,h}\in{C}[(f+g)+h=f+(g+h)]$
-
$\exists{O}\in{C}\forall{f}\in{C}[O+f=f]$(この$O$を$0$と表記する)
-
$\forall{f}\in{C}\exists{g}\in{C}[f+g=O]$(この$g$を$-f$と表記する)
-
$\forall{f,g}\in{C}[f+g=g+f]$
-
$\forall{f,g,h}\in{C}[(fg)h=f(gh)]$
-
$\forall{f,g,h}\in{C}[(f+g)h=fh+gh]$
-
$\forall{f,g}\in{C}[fg=gf]$
-
単位元は存在しない.つまり,$\forall{f}\in{C}\exists{g}\in{C}[fg\neq{f}]$
つまり,$C$は非単位的な可換環である.
proof.
5,7,8のみ確認する.
5について:
Fubiniの定理を利用して
7について:
$$ \begin{aligned} fg&=\left<\int_0^tf(\tau)g(t-\tau)\mathrm{d}\tau\right>\\ &=\left<\int_0^tf(t-\tau)g(\tau)\mathrm{d}\tau\right>\\ &=gh \end{aligned}$$8について:
もし単位元$e$が存在すると仮定すれば、定数関数$\left<1\right>$に対して,
$$\left<1\right>=e\left<1\right>=\left<\int_0^te(\tau)\mathrm{d}\tau\right>$$であるが,これの等式は$t=0$で成立しない.
(その3に続く)