2020/11/19 20:44 更新
フラティニ論法(Frattini argument)
目次

はじめに

初めまして。MakkyoExistsと申します。TwitterでMathWillsさんを知って、これは面白そうだなと思いとりあえずアカウントを作ってみました。最近数学界隈盛り上がってますね。学習環境がメキメキ整備されていってすごいなと思います。僕も貢献できるよう頑張ります。

前置きはそれくらいにして、本日は有限群論では有名なFrattini論法について紹介したいと思います。名前に「論法」とついてはいますが普通に「定理」です。では見ていきましょう。主張は

定理: (フラティニ論法)

$G$を群、$N$を$G$の有限位数の正規部分群とする。このとき$P$を$N$のSylow $p$-部分群とすると $$ G = N_G(P)N $$ が成り立つ。

という感じです。この定理は有限群論の議論をしていくうえででは「当たり前」として認識して話を進めることもあります。それくらいBasicな事実ということですね。あ、ちなみに$N_G(P)$という記号はよろしいでしょうか?

$N_G(P):=\{g \in G \,\,|\,\,g^{-1}Pg = P \}$

という定義で、これは$P$の$G$内の正規化群(normalizer of $P$ in $G$)と呼ばれています。では見ていきましょう。

シローの定理(一部)

Frattini論法の証明にはシローの定理が一部必要になりますので、シロー部分群の定義とシローの定理を紹介したいと思います。

定義: (シロー$p$-部分群)

$G$を有限群とし、$p$を素数とする。また$G$の位数を $$ |G|=p^nm $$ とする($m$は$p$と互いに素な自然数)。このとき、位数が$p^n$である部分群を$G$のシロー$p$-部分群(Sylow $p$-subgroup of $G$)といい、$G$のSylow $p$-部分群全体の集合を$Syl_{p}(G)$と表す。

つまりSylow $p$-部分群とは$G$の位数を因数分解したとき, $p$の最高べきの部分群ということですね。Sylow群には大事な事実がたくさんあります。まず、任意の素数$p$に対して有限群$G$はSylow $p$-部分群を必ず持つということです。これはSylow群の存在を保証するとても大切な事実です。

次に$G$のSylow $p$-部分群はすべて共役という事実です。共役というのは大丈夫ですか? 2つの部分群$H$, $K$に対し、$g^{-1}Kg = H$となるような元$g \in G$がとれるとき$H$と$K$は共役(conjugate)と言います。つまり$H$と$K$が$G$のSylow $p$-部分群なら$g^{-1}Kg = H$となる$g \in G$がいつでもとれるということですね。この2つの事実と、Sylow群の個数に付いての主張をまとめてシローの定理と呼ばれています。証明などもまた機会があれば書きたいと思います。

Frattini論法の証明

では、冒頭の定理

定理: (フラティニ論法)

$G$を群、$N$を$G$の有限位数の正規部分群とする。このとき$P$を$N$のSylow $p$-部分群とすると $$ G = N_G(P)N $$ が成り立つ。

を証明してみましょう。$P$を$N$のSylow $p$-部分群としているので$P \subseteq N$であることに注意してください。また$G$の部分群$X$, $G$の任意の元$g$に対して以下より
$X^g = g^{-1}Xg$
と書きます。$X^g$は$X$の「$g$乗」ではないことにも注意してくださいね。(まぁそもそも「$g$乗」なんて定義されてないわけですが一応念のため…笑)

Proof.
任意に$g \in G$をとる。$N$が$G$の正規部分群であることと$P \subseteq N$であることから
$P^g \subseteq N^g = N$
がわかる。よって$P^g$は$N$の部分群であり、$|P^g| = |P|$なので$P^g$も$N$のSylow $p$-部分群であることがわかる。またSylowの定理より$P$と$P^g$は$N$で共役になる。したがって
$(P^g)^n = P$
となるような$n \in N$がとれる(Sylowの定理を$N$に適用していることに注意)。つまり$P^{gn} = P$なので$gn \in N_G(P)$である。よって
$g \in N_G(P)n^{-1} \subseteq N_G(P)N$
となり、$G$の任意の元$g$が$N_G(P)N$に属することがわかった。つまり$G = N_G(P)N$が成り立つ。
Q.E.D

さいごに

どうでしたか? 使っている定義が少ないせいか今回はすぐに終わりましたね。これは僕も学部生の頃最初の最初のゼミでやりました。懐かしいですね。群論の授業の演習問題としても出てきそうです。

晴れて僕もMathWillsデビュー出来ました。実はMathlogというサイトにも同じ記事を投稿しているんですけどね笑 そちらも見てみて下さい。また誤植を見つけた方はコメントで教えて頂けると助かります。感想コメントもお待ちしております(反応してくれるというのは本当に嬉しいです!笑)

では、また!('-'*)