2022/11/08 19:12 更新
数学ゴール夕卜伝 JJMO 2011 年予選 7
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目次

あらすじ

中学時代にタイムリープしたハルミチは,まずは日本若年数学選手権 (JYMC) 予選を通過できる実力を養成するため,日々精進するのであった.

※ JYMC: Japan Youth Mathematics Championship

予選では試験時間は 3 時間で 12 問出題される.したがって,1 問あたり 15 分しか持ち時間がない.ただし,答えに至るプロセスまで詳細に記述する必要はなく,とにかく正しい数値が見いだせればよいので,正しい数値を予想したり,最短かつ最適な解法をすぐさま選択できるような研ぎ澄まされた勘と,正答まで一気にたどり着く瞬発力が要求される.

問題

今年は令和 4 年で,西暦は 2022 年である.そのことを考慮して,2011 年の日本ジュニア数学オリンピック予選の問題 7 を次のようにもじってみた.

$n$ 以上 $n+2022$ 以下の平方数がちょうど $4$ 個だけ存在するような正の整数 $n$ の最小値を求めよ.

解答

ハルミチ君は確信の持てる答えを得るのにちょうど 15 分かかってしまった.けれども,転生前の中学生時代,まだ数学選手権の存在を知る前はとてもこのような問題に取り組めるレベルではなかったことを思い返し,自身の確かな成長を噛みしめるのであった.「俺はまだまだ伸びるはずだ!」(ギュウッ)

$n$ 以上 $n+2022$ 以下の範囲にある平方数がちょうど $m^2$,$(m+1)^2$,$(m+2)^2$,$(m+3)^2$ の 4 個だけであるような正の整数 $m$ のアタリをつけることから始める.

$n$ 以上 $n+2022$ 以下の範囲にある平方数が $m^2$ から $(m+3)^2$ までの $4$ 個以下であるための条件は次の 2 つの不等式が共に成立することである.

  • $(m-1)^2<n$.
  • $n+2022<(m+4)^2$.

これら 2 つの不等式を合わせると,

$$(m-1)^2+2022<(m+4)^2$$

という不等式が得られる.これより $10m>2007$ を得て,$m\geqq 201$ でなければならないことがわかる.

そこで,$n$ の最小値の予想として,$n>(m-1)^2\geqq (200)^2=40000$ を満たす最小の整数,すなわち $n=40001$ を選んでみる.

このとき,$n=40001$ 以上の平方数のうちで最小のものは $(201)^2=40401$ である.

そして $(m+3)^2=(204)^2=41616$ で,これは $n+2022=42023$ よりも小さい.

また,念のため調べると,$(m+4)^2=(205)^2=42025$ で,これは $n+2022=42023$ よりも確かに大きい.

したがって,$n=40001$ 以上 $n+2022=42023$ 以下の平方数は $(201)^2$,$(202)^2$,$(203)^2$,$(204)^2$ のちょうど 4 個のみである.

なお,$n$ の値をこれより小さく,例えば $n=40000=(200)^2$ と取ってしまうと $n+2022=42022>(204)^2$ であるから,$n$ 以上 $n+2022$ 以下の平方数として $(200)^2$ から $(204)^2$ までの $5$ 個が存在してしまうこととなる.

以上により,$n$ 以上 $n+2022$ 以下の平方数がちょうど $4$ 個だけ存在するような正の整数 $n$ の最小値は $40001$ である.$\Box$

ちなみに,$n$ の最大値を求めるには,$n$ 以上 $n+2022$ 以下の平方数が $4$ 個以上あるための $m$ の条件として,$n\leqq m^2$ かつ $(m+3)^2\leqq n+2022$ から導かれる $6m\leqq 2013$ により,$m\leqq 335$ により,まず $m$ の最大値の候補として $m=335$ が得られ,$(m+3)^2=n+2022$ となる $n$,すなわち $n=112222$ を選んでみると,$m^2=(335)^2=112225>n$ であるから,$n=112222$ 以上 $n+2022=338^2$ 以下の平方数として,$335^2$,$336^2$,$337^2$,$338^2$ のちょうど $4$ 個が存在することとなる.したがって,$n$ 以上 $n+2022$ 以下の平方数がちょうど $4$ 個だけ存在するような正の整数 $n$ の最大値は $112222$ である.$\Box$