2021/04/12 02:01 更新
2.3. 自然数の逆数の和が発散すること
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目次

2. 級数

2.3. 自然数の逆数の和が発散すること

14 世紀フランスの万能な哲学者 Nicolas Oresme(ニコル・オレーム)が証明したとされる次の事実は高校の数学 III の教科書でも取り上げられている。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}=\infty.$$

この手の級数を扱う際に有効な方法は,高校の数学 B の数列の単元で習う群数列の考え方である。

数列 $(a_n)$ があるとして,これを項数が $\nu_{g}$ の群(グループ)に分ける。

第 $g$ 群の最後の項の通し番号は $\nu_{1}+\cdots+\nu_{g}$ となる。

さて,第 $g$ 群の中の最小数を $m_{g}$,最大数を $M_{g}$ とおき,第 $g$ 群の和を $s_{g}$ とおくと,

$$\nu_{g}m_{g}\le s_{g}\le \nu_{g}M_{g}$$

という不等式が成り立つ。

すべての $n$ につき $a_n$ が非負であるような正項級数を扱う場合には,その第 $n$ 部分和 $S_{n}=a_1+\cdots+a_n$ について,$a_n$ が $2$ 以上の $g$ に対して第 $g$ 群に属するとき,

$$s_{g-1}\le S_{n}\le s_{g}$$

が成り立つから,

$$\nu_{g-1}m_{g-1}\le S_{n}\le \nu_{g}M_{g}$$

が成り立つこととなる。

したがって,$\lim_{g\to\infty}\nu_{g}m_{g}=\infty$ ならば級数は発散し,$\lim_{g\to\infty}\nu_{g}M_{g}<\infty$ ならば級数は収束することがわかる。

それでは,この議論を自然数の逆数の和に適用してみよう。

数列 $\left(\frac{1}{n}\right)$ を,項数が $2^{g-1}=:\nu_{g}$ になるように分割する:

$$\frac{1}{1};\ \frac{1}{2},\ \frac{1}{3};\ \frac{1}{4},\ \frac{1}{5},\ \frac{1}{6},\ \frac{1}{7};\ \cdots$$

第 $g$ 群の最後の項の番号(通し番号)は $2^{g}-1$ であり,この数列は単調に減少するから,上で述べたグループ内の最小数の役割を果たすものとして $m_{g}=\dfrac{1}{2^{g}}$ が取れる。

このとき,$\nu_{g}m_{g}=\frac{1}{2}$ であるから,$s_{g}=\frac{1}{2}g$ となり,これは $g\to\infty$ の極限において正の無限大に発散する。したがって級数 $\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}$ も正の無限大に発散することとなる。

なお,第 $2^g$ 項までの部分和がおおよそ $\frac{1}{2}g$ 程度の大きさであり,
$g=\log_{2}2^g$ であることから,第 $n$ 項までの部分和は $\frac{1}{2}\log_{2}n$ 程度の大きさであろうと期待される。つまり,和は項数の対数オーダーで発散することが読み取れるわけであるが,定積分を利用するとこの観察が正しいことが容易に示せる。そのような手法は高校の数学 III の定積分の応用で学ぶ。