2020/11/20 22:07 更新
べき零群の基本性質(Normalizers grow)
目次

はじめに

$\,\,$こんにちは、MakkyoExistsです。MathWillsさんで記事書くのは2個目です。これも実はMathlogさんで書いたものをコピペしたものなんですけどね笑

$\,\,$まだどのプラットフォームでどういう記事を書くのが良いのか手探りなのでとりあえず同じものを載せたいと思います。(というかみんなまだ手探り手探りでやってますよね…笑
運営のみなさんこのような場所を提供して頂き感謝です僕も頑張ります。)

$\,\,$さて本日はべき零群の性質として有名な以下の定理

定理: Normalizers

$G$をべき零群、$H$を真部分群とすると、その正規化群$N_G(H)$は$H$を真に含む。つまり $$ H \subsetneq N_G(H) $$ が成り立つ。

を証明したいと思います。正規化群はこちらの記事(https://mathlog.info/articles/554)でも出てきた通りですが
$N_G(H):=\{g \in G\,\,|\,\,g^{-1}Hg = H\}$
という定義です。では見ていきましょう。

基本の定義

$\,\,$まずはべき零群とはなんぞやというところから定義したいと思います。既知の方は飛ばしてください。

定義: 中心列、べき零群

$G$を有限群とし、$\{N_i \}_{i=0}^r$を$G$の正規部分群の族とする。これが $$ 1 = N_0 \subseteq N_1 \subseteq \dots \subseteq N_r = G $$ という状況になっていて、さらに任意の$i$に対して $$ N_i/N_{i-1} \subseteq Z(G/N_{i-1}) $$ をみたしているとする。このとき$\{N_i \}_{i=0}^r$を$G$の中心列(central series)という。一般に群が与えられたときそれが中心列を持つとは限らない。中心列を持つ群をべき零群(nilpotent group)という。

$\,\,$べき零群はそれ単体でも研究対象として十分広いクラスを持ちます。大事な事実がいくつかあってまずべき零群の部分群はまたべき零群になるということです。これは大元の群の中心列を部分群に制限することで示せます。またべき零群の剰余群もべき零群になります。この2つの事実はとても基本です。(リクエストがあれば証明も付けますがググれば色々出てくると思うのでハショります。)

証明

$\,\,$では冒頭の定理

定理: Normalizers

$G$をべき零群、$H$を真部分群とすると、その正規化群$N_G(H)$は$H$を真に含む。つまり $$ H \subsetneq N_G(H) $$ が成り立つ。

を証明します。この証明には対応定理とよばれる、剰余群の部分群と大元の群の割ったところを含む部分群が対応しているという事実を使いますので初学者には少し誤魔化されているように感じるところがあるかもしれません。この辺も分かりづらいと感じられたら別記事を書きますので是非コメント下さい。

Proof
$H$を$G$の真部分群とする。$G$はべき零群なので中心列を持ち、その中心列を$\{N_i \}_{i=0}^r$とおく。中心列の定義から$N_0 = 1$であり$N_r = G$である。$H$は真部分群なので
$N_0 = 1 \subseteq H < G$
である。ここで$N_k$を中心列の項で、$H$に含まれる最大のもの、つまり
$N_k \subseteq H,\,\,\,\,\,\,\,N_{k+1} \nsubseteq H$
となるものとする。中心列の定義から$N_{k+1}/N_k \subseteq Z(G/N_k)$であり、中心はどの部分群も正規化するので$Z(G/N_k) \subseteq N_{G/N_k}(H/N_k)$となる。まとめると
$N_{k+1}/N_k \subseteq Z(G/N_k) \subseteq N_{G/N_k}(H/N_k) = N_G(H)/N_k$
となる。よって$N_{k+1} \subseteq N_G(H)$が導かれる。
(厳密にいうとここで対応定理っぽいことを言及しなければならない。)
以上より
$N_{k+1} \nsubseteq H,\,\,\,\,\,N_{k+1} \subseteq N_G(H)$
がいえたので$H < N_G(H)$がいえた。
Q.E.D.

おわりに

$\,\,$どうだったでしょうか? 剰余群をとる操作を何回かするので初学者にとっては目が疲れる作業だったかもしれないですね。

$\,\,$ちなみに、このNormalizers growは逆も言えて、今日やったこととまとめると

定理:

$G$を群とすると、$G$はべき零群であることと、$G$の任意の真部分群$H$について$H < N_G(H)$が成り立つことは同値である。

ということが言えます。有限べき零群には同値な条件がいくつかあって、有名なものでいうと有限べき零群はシロー群全部の直積になるというものがあります。これは有限べき零群の構造定理とも言われますね。また機会があったらこの辺も書きたいと思います。

$\,\,$今回も最後まで読んで頂いてありがとうございました。誤字脱字誤り箇所など見つけたら教えて下さい。また読んでみた感想もお待ちしております。

$\,\,$では、また!('-'*)